主な登場人物・キャスト
本作に登場する人物を、役名・俳優名・役割が分かるように整理しています。
難解で判別しづらいキャラクターが多いため、視聴時の確認用としてお使いください。
| 役名(英語/カタカナ) | 演者(英語/カタカナ) | 役柄紹介 |
|---|---|---|
| Jensen(ジェンセン) | Shane Twerdun(シェイン・トゥワーダン) | 発掘調査隊の現場責任者。冷静沈着だが、異変の拡大とともに精神的に追い詰められていく。 |
| Professor Piers Olsen(ピアーズ・オルセン教授) | Michael Dickson(マイケル・ディクソン) | 考古学専門の教授。発見された構造物の意味を解明しようとする理性的な学者。 |
| Francis Månro(フランシス・マンロ) | Carl Toftfelt(カール・トフトフェルト) | プロジェクトのディレクター。恐怖と孤立の中で次第に不安定な行動を見せる。 |
| Robert Michael Giles(ロバート・マイケル・ジャイルズ) | Marc Anthony Williams(マーク・アンソニー・ウィリアムズ) | 現場監督。経験豊富なベテラン隊員。極寒の孤立環境で徐々に理性を失っていく。 |
| Dr. Richard Anders(リチャード・アンダーズ博士) | Andrew Moxham(アンドリュー・モックスハム) | 調査隊の医療担当者。未知の存在を科学的に説明しようと試みるが、理屈の通らない事態に直面する。 |
| Drew McNaughton(ドリュー・マクノートン) | Timothy Lyle(ティーモシー・ライル) | 機械技術者。冷静に見えるが、隊の崩壊と共に精神的に追い詰められる。 |
| Steven Wells(スティーヴン・ウェルズ) | Steve Bradley(スティーヴ・ブラッドリー) | カルガリーの企業のインターンシップ。マンロのアシスタント的な存在。 |
| “Deer God”(ディア・ゴッド/クリーチャー) | Nathaniel Gordon(ナサニエル・ゴードン) | 遺跡の謎に関わる存在。人知を超えた象徴的クリーチャーとして登場。 |
| Ramis(ラミス) | Bryce McLaughlin(ブライス・マクラフリン) | 調理担当のスタッフ。異変の初期段階で飼い猫(ギブソン)が殺される。 |
| Navaron(ナヴァロン) | Kelvin Bonneau(ケルヴィン・ボノー) | 現地協力者。マクノートンが猫を殺すのを見たと主張する。 |
| Station 9(ステーション9/通信員) | Cameron Tremblay(キャメロン・トレンブレイ) | ステーション9の通信担当。声のみでの出演。 |
あらすじ(ネタバレ含む)
『Black Mountain Side(ブラック・マウンテン・サイド)』は、極寒のカナダ北部で古代遺跡を発見した調査隊が、“未知の感染”と“見えざる存在”に追い詰められる極地ホラー作品。孤立した研究施設、ラヴクラフト系の宇宙的恐怖、人間の精神崩壊といった要素がじわじわと重なり、静かで不穏な展開が続いていきます。
以下では、映画の内容を 物語順に可能な限り忠実に まとめています。
■注意
英語字幕版のDVDを視聴しながら内容をまとめたため、細部の把握に誤りがある可能性があります。
また、登場人物の多くが髭面かつ防寒帽・防寒着を着用しており、映像から誰が誰か判別しづらい場面も多くあります。
登場人物の識別に誤りがある可能性もありますので、ご了承のうえお読みください。
謎の遺跡
舞台はカナダ北部の極寒地帯。
ジェンセン率いる小規模な調査隊が、氷に覆われた山岳地帯で古代の遺跡を発見する。
その連絡を受け、考古学者 オルセン教授 がヘリで現場に駆け付けるところから物語が始まる。
発掘が進むにつれ、遺跡から発見された構造物は1万年以上前のものでありながら、現代人のような建築技術が用いられているという謎に包まれていた。
彼らは「人類史を書き換える発見」――に興奮するが、すぐに無線が不通となり、外界から完全に孤立してしまう。
衛星電話も無線も使用不能、吹雪により補給も途絶する。

異変の始まり
ある日、調理担当のラミスの飼い猫・ギブソンが、遺跡で無惨に殺されているのが発見される。
現地協力者のナヴァロンは「マクノートンが猫を殺したのを見た」と証言するが、本人に確認するとマクノートンはこれを否定。
ジェンセンもラミスも、ナヴァロンの話を信じようとしなかった。
しかしそれを契機に、現地協力者たちは全員、不可解にも忽然と姿を消してしまう。
発掘の継続が困難になったため、隊員たちは緊急会議を開く。
その席で、ウェルズが体調不良を訴え、黒い液体を嘔吐。
一週間が経過しても症状は改善せず、むしろ悪化する一方だった。
この時点で医師のアンダーズは、「重度のインフルエンザだろう」と診断する。
続いて、マクノートンの様子にも異常が現れ始める。
感染拡大
数日後の夜、ウェルズの症状はさらに悪化。
苦しむ彼の右腕の皮下には、謎の生命体の寄生が確認され、それが蠢いていた。
ジェンセン、マンロ、ジャイルズが暴れるウェルズを押さえ、アンダーズが見守る中、オルセンが斧で異常な右腕を切断する。
別の日、マンロは遺跡の方から自分の名を呼ぶ声を聞く。
さらに後日、マクノートンが自らの右腕を切断しているのをジェンセンが発見。
錯乱状態の彼を、駆けつけたジャイルズとアンダーズ医師が協力して取り押さえる。
アンダーズ医師は抗精神病薬を投与し、マクノートンを強制的に眠らせた。
その夜、ジェンセンもまた、遺跡から呼ぶ声を聞く。
本人は「悪夢を見ただけ」と自分に言い聞かせようとするが、明らかに“何か”に呼ばれていた。
やがて、オルセンも同じように、遺跡から語りかける“何か”の声を耳にするようになる。
崩壊の跫音
やがて、マクノートンはライフルの銃口をくわえ、引き金を引いて頭を撃ち抜き、自ら命を絶った。
アンダーズ医師は遺体を検視・解剖する。
皮下には腫瘍が発生しており、病理検査の結果、それは人間の細胞から頭足類に類似した細胞へと変化する途中段階であることが判明する。
さらに、筋肉組織上で増殖していた細胞群には、ある一定の大きさに達すると分離し、独立して動き出す性質があった。
つまり、マクノートンの遺体は、何千もの小さなタコ状の生物に変化しつつあった。
この“侵略細胞”への対抗策として、アンダーズ医師は副作用の危険を承知のうえで、手持ちの抗生物質をすべて投与するしかないと判断する。
そして、「ウェルズを救うには、一刻も早く病院へ搬送する必要がある」と警告した。
同時に、この未知の細菌が伝染性を持つことを全員が理解する。
事態を重く見たオルセンは、「発掘現場を埋め戻し、周囲を隔離・消毒すべきだ」と主張。
しかし、ジェンセンは「そんなことをしたら、この三年間の努力が水の泡になる」と反対する。
だが最終的に、ジェンセンも遺跡の封鎖を受け入れるのだった。
遺跡からの呼び声
その後、マンロの耳に再び遺跡からの声が響く。
彼はその声に返答し、まるで会話を交わすようになり、次第に“遺跡の声”を信じるようになっていった。
精神的に疲弊したオルセンは、アンダーズ医師を訪ねるが不在。
代わりに医療施設の小屋にいたのは、全身を血で汚したマンロだった。
マンロはうわごとのように弁解する。「苦しむウェルズに懇願されたから、頼まれたから楽にしてやった。ウェルズがそう望んだんだ!」
ただ事ではないと直感したオルセンが警報を鳴らすと、ジェンセンらが駆けつけ、ジャイルズがライフルを構え「動くな!」と警告。
マンロを自室に連行し、外から鍵をかけて監禁した。
幻視と狂気
一件が落ち着いたあと、オルセンは改めてアンダーズ医師の診察を受ける。
しかし診察の途中で、ジェンセンからの呼び出しが入り、アンダーズは席を外す。
医師が去り、オルセンが独りになったそのとき――
冷たく横たわるマクノートンの死体が、突然語り始めた。
「彼らは幼虫を人間の皮膚に産み付ける。眼球内で生き、人間を“卵”として利用する……」
恐怖に駆られたオルセンは、「そんなことを、なぜ私に語る!」と絶叫しながら、死体の顔面を何度何度もライフルの銃床で叩きつけ、頭部を粉砕した。
直後に戻ってきたアンダーズ医師は、凄惨な光景を目の当たりにし、言葉を失う。
オルセンは「マクノートンが語りかけてきたんだ!」と必死に訴えるが、アンダーズは静かに問いかけた。「いつから眠れていない? それは幻覚だ。……これを飲めば、少しは眠れる」
そしてオルセンに睡眠薬を手渡した。
その頃、ジェンセンは監禁中のマンロを訪れ、「歩いて保護区まで移動するつもりだ」と告げた。
マンロは怯えた表情で、「全員が見張られている……鹿のようなものに。どうか、独りにしないでくれ」と懇願する。
だがジェンセンは、「そいつは君の頭の中にだけいる。妄想だ」と冷静に言い残し、部屋を去った。
疑心と殺戮
翌日、ジェンセンが移動の準備を進めていると、ジャイルズが現れ、「私たちを捨てるつもりか」と詰め寄る。
ジェンセンは「そんなことはない」と否定するが、すでに人間不信と狂気に陥っていたジャイルズは耳を貸さなかった。
その夜、銃を手にしたジャイルズがアンダーズ医師とラミスを射殺。
さらに他の隊員の部屋にも押し入り、次々に殺そうとする。
しかし、それに気づいたジェンセンが奇襲をかけ、短い銃撃戦の末、ジャイルズを撃ち倒す。
だがジェンセン自身も腹部に銃弾を受け、致命傷を負ってしまう。
銃声を聞いて駆けつけたオルセンに、血を流し苦痛を堪えながらジェンセンは告げる。
「140km歩けば保護区に着く……急げば一日半だ」
オルセンは夜明け直前のまだ闇の濃い雪原を走りだし、保護区を目指す。
鹿の神と崩壊
その頃、ジェンセンの前に“鹿の姿をした神”――Deer God(ディア・ゴッド)が姿を表し、哲学的に語りかけた。
異形を直視したジェンセンの理性は崩壊しかけたが、それでも残るわずかな正気を振り絞り、小屋からダイナマイトの詰まった箱を持ち出した。
そして、すべての元凶である遺跡を爆破しようと試みる。
夜が明け、雪原を進むオルセンは動物用の罠を踏み抜いてしまう。冷たい鉄の爪が脚を挟み、身動きが取れなくなる。
雪の上でもがき続けたオルセンだったが、やがて動かなくなった。
――こうして物語は静かに幕を閉じる。
解釈と余韻
『Black Mountain Side』は、明確な“敵”の姿をほとんど見せず、
「未知への恐怖」と「人間の内面崩壊」を主題に据えた作品である。
構成としては、
- SF的感染要素をもつ『遊星よりの物体X』
- 宇宙的恐怖を描くラヴクラフト『狂気の山脈にて』
の両要素が融合している。
観客の解釈次第で、
- 古代文明の遺物が「旧支配者的存在」を呼び覚ました話
- 孤立した人間たちの集団心理による錯乱と暴力の連鎖
のどちらとしても読むことができる。
答えのない終わり方が、寒々とした余韻を残す。

感想・レビュー:映画『ブラック・マウンテン・サイド』とは?
「遊星からの物体X」に似たカナダ発ホラー
ジョン・カーペンターの「遊星からの物体X」に近い作品だと聞いて、「Black Mountain Side」を鑑賞しました。
確かに、“遊星からの物体X的”な雰囲気はあります。とはいえ、完成度としては「遊星からの物体X」が好きで、自主制作してみました――というレベルの作品です。
内容的に、もし邦題をつけるなら「黒き山の影 ― もう一つの物体X ―」といったサブタイトルを付けたくなります。配給会社によっては、日本語字幕版を発売する際、「新・遊星からの物体X」などと続編っぽい邦題をつけそうです。ゾンビ映画などでこうした邦題の付け方を何度も見てきたので、実際ありそうですよね。
ちなみに個人的な評価として、「遊星からの物体X」を10点満点とするなら、「Black Mountain Side」は4点ほどです。
グロ描写が少なすぎる? 低予算が生んだ物足りなさ
内容自体は決してつまらなくありません。あらすじだけを読めば、とても面白そうな作品に思えるでしょう。
しかし、残念ながらこの作品には明らかに予算が足りなかったようで、映像的に見せ場となるシーンがほとんど描かれていません。
例えば、グロ描写の一番の見せ場であるはずの「人間の細胞が頭足類に類似した細胞へ変化する」や「マクノートンの遺体が何千もの小さなタコ状の生物に変化しつつある」といった場面は、医師のセリフで説明されるだけ。実際の映像としては一切描かれません。
この映像表現の貧弱さは、1951年制作の映画「遊星よりの物体X」といい勝負です。2014年のホラー映画でこれは、さすがに物足りません。
クトゥルフ神話要素の含まれる作品なら、やはりSAN値直葬のショッキング映像は欠かせません。
この部分の映像をもう少し頑張って見せていれば、作品全体の評価は大きく上がったと思います。少なくとも自分なら10点満点中8点はつけていたでしょう。
鹿の神とタコの関係性は? ラヴクラフト的要素を考察
さらに、“ラヴクラフト作品の雰囲気”があり、“タコ”というワードが出てくるなら、「クトゥルフの落し子(Spawn of Cthulhu)」のような生物が少しでも登場するのでは――と期待しますよね。……結局、まったく出てきませんでしたが。
そして、“鹿の神”と“タコ”。この両者の間に、どんな関係や繋がりがあるのか――最後まで理解できませんでした。
『ブラック・マウンテン・サイド』はAmazonで見られる? 視聴方法は?
現状、国内のAmazonプライム・ビデオでは配信されていません。Amazonで海外版のDVDやBlu-rayは購入できますが、鑑賞するなら円盤一択です。
ただし、正直なところ「高画質で観たい」と思うようなグロシーンは皆無なので、値の張るBlu-rayよりも安価なDVDで十分だと思います。海外版なので当然、日本語字幕はありません。
叶うことなら、国内Amazonプライム・ビデオで日本語字幕版を配信してほしいですね。
まとめ:ホラー好きなら一度観ておきたい、寒冷地スリラー
もしあなたがジョン・カーペンター版『遊星からの物体X(The Thing, 1982)』のファンであれば、ぜひこの映画――カナダの若手監督ニック・ソスタキウスキーによる、極めて静謐で不穏なインディーズ作品『Black Mountain Side(ブラック・マウンテン・サイド)』(2014)も知っておくべきでしょう。
また、ウェンディゴ大好きなラリー・フェセンデン監督による『地球が凍りつく日/The Last Winter』(2006)のような、氷雪ホラーが好きな人にも『Black Mountain Side』は刺さる可能性が高いです。
個人的には、氷雪ホラーに共通する“自然の不可知性”も含めて、本作はジャンル的な橋渡し作品だと感じます。
さらに、『Black Mountain Side』にはクトゥルフ神話(ラヴクラフト)要素も感じられますが、『地球が凍りつく日』にもウェンディゴ(イタカ)が登場するため、広義ではどちらも“クトゥルフ神話的世界観”に連なる作品と言えるでしょう。
作品の基本情報
| タイトル | ブラック・マウンテン・サイド(黒き山の影)※国内未公開/(原題)Black Mountain Side |
|---|---|
| 公開年/製作国 | 2014年製作・2016年リリース/カナダ |
| 監督・脚本 | ニック・ソスタキウスキー |
| キャスト | シェイン・トゥワーダン/マイケル・ディクソン/カール・トフトフェルト/マーク・アンソニー・ウィリアムズ/アンドリュー・モックスハム/ティモシー・ライル/スティーヴ・ブラッドリー/ナサニエル・ゴードン/ブライス・マクラフリン/ケルヴィン・ボノー ほか |
| 上映時間 | 99分 |
| ジャンル | 寄生×心理ホラー/スリラー |
| 視聴環境 | DVD(国内未発売) |
備考
- 撮影時の気温は実際にマイナス20℃以下。
→ 俳優たちは本当に“閉じ込められた状態”で撮影されており、リアルな疲労感が画面に滲む。 - 監督のニック・ソスタキウスキーは本作で注目され、のちに『Archon(2018)』『The Chamber(短編)』なども制作。
- 登場人物の多くが名前で呼ばれる場面が少ないため、観客は“誰が誰かわからない不安”を意図的に感じるよう設計されている。

