バイオ・スライム(Bio Slime/別題Contagion)鑑賞レビュー

スライム系

主な登場人物・キャスト(ネタバレ含む)

 以下は登場人物とキャストを、自分の整理も兼ねてまとめた一覧です。ストーリーの重要な部分(ネタバレ)を含んでいますので、未視聴の方はご注意ください。

登場人物(英名) キャスト(カタカナ表記) 備考(ネタバレ含む)
トロイ(Troy) Vinnie Bilancio(ヴィニー・ビランシオ) 主人公。アル中の画家。スライムに襲われ、部屋に閉じこもる7人のうちの1人。
メアリー(Mary) Victoria De Mare(ヴィクトリア・デ・メア) トロイの友人でポルノ女優。壁の穴から逃げようとして2番目の犠牲者。
ハル(Hal) Ronnie Lewis(ロニー・ルイス) トロイの弟子。部屋に閉じこもる7人のうちの1人で、生還者。
シャノン(Shannon) Kelli Kaye(ケリー・ケイ) DV旦那から逃げ、トロイを頼って訪れる。部屋に閉じこもる7人のうちの1人で、生還者。
アニー(Annie) Gia Paloma(ジア・パロマ) 撮影で偶然居合わせたポルノ女優。スライムに寄生され、最初の犠牲者。
コンスタンツァ(Constanza) Micol Bartolucci(ミコル・バルトルッチ) アパートのオーナーの妻。脱出中に4番目の犠牲者。
ジャック(Jack) Magic J. Ellingson(マジック・J・エリングソン) アパート住人。天井から落ちたスライムに捕まり3番目の犠牲者。
ランドロード(Landlord) Al Burke(アル・バーク) アパートのオーナー。倉庫でスライムに襲われる。
ドナ(Donna) Monique La Barr(モニーク・ラ・バー) ジャックの知り合い。黒いアタッシュケースを持ち込み、アパートで最初の犠牲者。
デイヴィッド(David) Tai Chan Ngo(タイ・チャン・ンゴー) 研究室からスーツケースを盗む。冒頭でスライム化した警官を撃つが逆に殺される。
クリーチャー・ボイス(Creature’s voice) Ron Fitzgerald(ロン・フィッツジェラルド) スライムの声を担当。

あらすじ(ネタバレ含む)

 低予算ながら濃厚な“粘液クリーチャー描写”が光る『Bio Slime/Contagion(2010)』。
 この映画は、アパートという閉ざされた空間に未知のスライム生命体が解き放たれ、住人たちが  逃げ場のない恐怖に追い詰められていく密室ホラーです。
 ここからは、物語の流れを分かりやすく整理しつつ、怪物の特徴や重要な展開を含む「あらすじ(ネタバレあり)」を順に紹介していきます。

解放されたスライム

  ある科学研究室から盗まれた、未知の生物兵器が封じられた黒いアタッシュケースが、ロサンゼルス近郊のポルノ撮影所兼アパートに持ち込まれる。
 住人の一人でアル中の画家・トロイが偶然ケースを見つけて開け、中にあった機械のスイッチを興味本位で適当に触ると、ロックが解除され、黒いスライムが姿を現す。スライムはいったんトロイに貼りつくが、なぜかすぐに引っ込み、トロイは酒のせいで幻覚を見たのだと勘違いしてその場を去る。
 しかしその後、危険な「スライム(粘液状生物)」が解き放たれ、アパート内に広がっていく。

 このスライムは、形を自在に変え、触手を伸ばしたり、虫や人形のような姿を取ったりする。人間を襲って体内に侵入し、少しずつ内部から同化していく怪物的な存在として描かれている。

逃げ場なし

 トロイを含む7人の男女はスライムに襲われ、トロイの部屋に立てこもる。この部屋は窓がなく外の様子は分からず、携帯も使えないため外部との連絡も絶たれてしまう。

 壁に開いていた小さな穴を利用し、身体の小さいアニーが古い荷物用エレベーターの昇降路を登って脱出経路を確認しに行く。ほどなく戻ってきた彼女は、「上はスライムでいっぱい」と報告するが、この時点ですでに寄生されており、やがて怪物化してしまう。
 それを見たメアリーは、壁の穴から下へ逃げようとするが、待ち構えていたスライムに捕獲され、同化されてしまう。
 一方そのころ、他の人々は怪物化したアニーをゴミバケツの中に封じ込めることに成功する。

対決と脱出

 その後、トロイはケースの中にスライムを制御する電磁干渉装置があったことを思い出し、血中アルコール濃度が高い自分なら襲われないと考えて、新たに壁に穴を開けケースを取りに行く。
 ケースを回収したトロイは、部屋に戻り針金で装置のロック解除を試みる。その間、部屋に残った4人のうちジャックが、天井から落ちてきたスライムに襲われ犠牲となる。

 トロイはロック解除に成功した装置を仲間に託し、「自分がスライムを引き止めるから逃げろ」と言う。脱出の途中でコンスタンツァが犠牲になるが、装置を作動させたハルシャノンはなんとか脱出。
 残ったトロイは画材用のアルコールを部屋にまき、スライムを巻き込んで自爆する。

終わっていなかった

 最終的に警察に保護されたハルシャノンは、警官から「あのアパートからはもう一人、ゴミバケツに入った状態で助かっている」と告げられます。スライムに同化されていたアニーの生存が明らかになり、物語は幕を閉じます。


『Bio Slime』感想・レビュー

スライム映画が好きです

 昔、よくTVで放映されていた『人喰いアメーバの恐怖2(別題:悪魔のエイリアン)/Son of Blob(1971)』や、その系譜である『ブロブ/宇宙からの不明物体/THE BLOB(1988)』が大好きです。
 さすがに『人喰いアメーバの恐怖/THE BLOB(1958)』は映像が古く地味なので、観たことはあるものの印象には残っていません。

 そんな中、別のスライム映画や類似作品はないかと探していたところ、「Bio Slime」という作品を見つけました。これは観るしかないと思ったのですが……。


しかし日本語版のDVDも国内配信もなかった

 マイナー作品のためか、アメリカのAmazonプライム・ビデオでは配信されていますが、日本のAmazonプライム・ビデオでは未配信でした。
 代わりにYouTubeで英語字幕版が配信されていたので、そちらで鑑賞。英語字幕があるだけマシですが、英語が苦手なので本当は日本語字幕版で観たかったところです。しかしリリースがないため、仕方なく英語字幕で頑張って観ました。


このスライム、なんか思ってたのと違う

 スライムといえば、知性がなく本能で獲物を捕食する下等な粘菌状の怪物というイメージでしたが、本作のスライムはまったく異なる存在でした。きっと、バイオテクノロジーで誕生したスライムだからなのでしょう。
 人間を「食べる」のではなく「取り込んで同化」し、人間の知識や記憶を共有。取り込まれた人間の意識はスライムの中で混ざり合い、一種の集合体として残存しているように描かれています。
 虫のような姿や人形の姿に変形したり、無数の触手を伸ばしたりと非常に芸達者。人形形態では普通に会話もでき、同化後に元の人間の姿へ擬態して社会に紛れ込む個体まで存在します。
 どちらかといえば『遊星からの物体X』やシンビオート(ヴェノム)系に近い存在で、想像していたスライム像とは大きく異なっていました。


酔っぱらいとは同化できない

 このスライムは、血中アルコール濃度が高い人間を取り込めないという設定で、主人公トロイは酒浸りのおかげで犠牲になりません。
 芸術家のトロイは日本刀を部屋にコレクションしており、この映画では、人間と同化したスライムが日本刀で横方向に真っ二つに斬られるシーンも登場します(実際に斬るのはハル)。斬られると、断面から無数の触手がシュルシュルと伸びて、人間を襲います。

 クライマックスでは、トロイが飲料不可の工業用アルコールを摂取し、日本刀を手にスライムと対峙します。しかし酔っ払いの中年男というキャラクターなので、ヒーロー的なカッコよさはなく、かといって死を覚悟した滅びの美学を感じさせるわけでもなく、胸熱展開とまではいきませんでした。


ゴア表現はほとんどなし

 スライム系ホラーといえば、人間を溶かして吸収するグロテスクなシーンが見どころですが、この映画では人間を残酷に「食べる」描写がないため、ゴア表現はほとんどありません。ちょっと拍子抜けです。
 一応、スライム自体はCGではなく、古典的なドロドロした粘液で表現されており、役者も実際に血糊や黒い液体まみれになっています。そのあたりの“手作り感”は悪くないのですが、そもそも人体破壊シーンがないので、SFXの見せ場としては物足りなさを感じました。
 同じような黒いスライムが登場する『クリープショー2』の短編「殺人筏(さつじんいかだ)」の方が、スライムの捕食や人間溶解の描写にしっかり力が入っており、迫力・完成度ともに上。比べてしまうと、やはりこちらは淡白に見えてしまいます。
 『バイオ・スライム』も、もう少しだけその手のシーンを頑張って盛り込めば――惜しい! B級ホラー好きの間で語り継がれるカルト作品になっていたかもしれません。


まとめ:総合評価としては可もなく不可もなく

 ストーリーが秀逸というわけでもなく、舞台はほぼアパートの一室という限定的な空間のみ。面白いかと聞かれると返答に困る内容ですが、決してひどい、つまらないわけでもありません。
 正直、評価としては「可もなく不可もなく」。DVDの有料レンタルで観るならアリですが、英語字幕のみで3000円以上する海外盤の円盤を買うほどではない、というレベルです。
 とはいえ、日本のAmazonプライム・ビデオで配信されたら、十分に観る価値はある作品だと思います。


作品の基本情報

タイトルバイオ・スライム(原題:Bio Slime/別題:Contagion
公開年/製作国2010年/アメリカ
監督・脚本ジョン・リチャゴ
キャストヴィニー・ビランシオ/ヴィクトリア・デ・マレ/ロニー・ルイス/ジア・パロマ/ケリー・ケイ/マジック・J・エリンソン ほか
上映時間90分
ジャンルホラー・SF
視聴環境Web配信(英語字幕)

注意: 『コンテイジョン/Contagion(アメリカ2011)』とは完全に別の作品です。


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