13ゴースト/Thir13en Ghosts 2001年リメイク版の鑑賞レビュー

幽霊屋敷系

主な登場人物・キャスト

登場人物役者概要
アーサー・クリティコストニー・シャルーブ(Tony Shalhoub)妻を火災で失った高校教師。子どもたちと慎ましく暮らしている。亡き叔父から不思議な館を相続する。
ジーン・クリティコスキャスリン・アンダーソン(Kathryn Anderson)火事でなくなったアーサーの妻。The Withered Lover(枯れた恋人)として屋敷に囚われている。
キャシー・クリティコスシャノン・エリザベス(Shannon Elizabeth)アーサーの娘。明るく家族思いだが、霊の館で恐怖に巻き込まれる。
ボビー・クリティコスアレック・ロバーツ(Alec Roberts)アーサーの息子。好奇心旺盛な少年で、霊たちの存在をいち早く感じ取る。
マギー・バウズラー・ディッガ(Rah Digga)クリティコス家のハウスキーパー。明るく、コメディリリーフ的存在。
デニス・ラフキンマシュー・リラード(Matthew Lillard)霊感を持つエンジニア。叔父の霊捕獲装置を手伝っていたが、後悔と恐怖を抱えている。
サイラス・クリティコスF・マーリー・エイブラハム(F. Murray Abraham)アーサーの叔父。オカルト収集家で、強力な幽霊たちを集め「悪魔の機械」を完成させようとする。
カリーナエンベス・デイヴィッツ(Embeth Davidtz)霊媒師を名乗る女性。実はサイラスと共謀しているが、やがて裏切りの報いを受ける。

あらすじ(最後まで・ネタバレあり)

 物語は、霊を捕獲するオカルト収集家サイラス・クリティコスと、その協力者でサイコメトリーのような霊感を持つデニス・ラフキンが、巨大な廃車保管場で「怒れる幽霊(The Juggernaut)」を捕らえようとする場面から始まる。捕獲には成功するものの、多くの犠牲者が出て、サイラス自身も死亡したかに見えた。

 その後、サイラスの甥であるアーサーは弁護士から連絡を受け、「亡き叔父が遺した館」を相続することになる。借金に苦しんでいた家族にとっては、夢のような話だった。
 館は全面ガラス張りで、内部には奇妙な文字や機械仕掛けが施されていた。

 しかし、その館は実はサイラス12体の幽霊を閉じ込めるために建てた、装置付きの牢獄兼オカルトマシンだった。ガラスの壁にはラテン語の祈祷文(封印文様/protection spells)が刻まれ、それが結界、あるいは封印として働き、霊が外に出られない仕組みになっていた。

 アーサーたちが館を見学中、突然仕掛けが作動。館の構造が自動的に動き始め、ガラスの扉が閉まり、捕らえられていた幽霊たちが次々と解放される。

 幽霊たちはそれぞれ悲惨な過去を持ち、強い怨念に支配されていた。

代表的な幽霊たち:

  • 苦悩の王子(The First Born Son)
  • 絞殺された恋人(The Angry Princess)
  • 浴槽の女(The Torso)
  • 拷問王女(The Bound Woman)
  • 殺人ジャガーノート(The Juggernaut) など

 霊たちは侵入者を次々と襲う。火事で亡くなったアーサーの妻、ジーンの霊も枯れた恋人(The Withered Lover)として館に囚われていたが、彼女だけは善なる霊として館に閉じ込められた家族を助けようとする。
 アーサーは家族を守るため、成り行きで、デニスや霊媒師のカリーナと協力して館からの脱出を試みるが、次第に「館そのものが巨大な呪いの装置」であることが判明する。

 それは「バシリウスの機械(The Ocularis Infernum)」という、地獄の目を開くための装置。
 12体の選ばれた幽霊の魂を利用して、未来を見通す究極の力を得るためのマシンだった。

 やがて、死んだと思われていたサイラスが生きていたことが判明。
 彼は甥のアーサーを13番目の“犠牲の霊”として利用し、最終儀式を完成させようとしていたのだ。

 しかし、協力者だったカリーナは土壇場でサイラスに裏切られる。そして幽霊たちが暴走を始める。
 デニスアーサーを守るために命を落とすが、その死が時間を稼ぐことになる。

 クライマックスでは、アーサー回転する刃の装置の中心部に飛び込み、子どもたちを救う
 同時に、幽霊たちがサイラスを襲い、彼は自らの集めた霊たちに殺される。

 装置が崩壊し、館を覆っていた呪縛が解ける。幽霊たちは次々と解放され、屋敷の外へと歩み出す。
 彼らはまるで百鬼夜行のように夜の森をそぞろ歩き、やがて静かな夜気の中へと溶け込むように姿を消していく。

 アーサーは家族と再会し、亡き妻ジーンの霊が「愛しています」と言い残して微笑み、静かに消えていく。


感想・レビュー:「13ゴースト」について(ネタバレ含む)

この作品はリメイクです

 1960年製作のモノクロ映画『13 Ghosts(13の幽霊)』をリメイクしたのが、2001年版『13ゴースト』です。
 1960年版は未見ですが、本来は赤と青のフィルムを貼った特殊メガネ「イリュージョン・O(オー)」を使って観る“立体映画”だったようです。配信で見るのではなく、DVDを購入すると、この「イリュージョン・O(オー)」のレプリカが特典として付属します。
 オリジナル版が古典的な心霊屋敷コメディだったのに対し、リメイク版はオカルト要素にスプラッター的演出とゴシック・ビジュアルを加えた、よりスタイリッシュなホラーへと大胆に変化しています。


ストーリーよりも映像を楽しむ作品

 私は映画を見るとき、まず2倍速で最初から最後まで通して観て、あらすじや感想を書くときに何度か見直すようにしています。
 この映画の冒頭部分は、最初に観たとき何をやっているのか意味がわからず、内容を理解できませんでした。
 しかし2回目以降の見直しで、「ああ、ここで“怒れる幽霊(ジャガーノート)”を捕獲していたのか」と理解しました。
 このシーンで捕獲された“怒れる幽霊”が屋敷に運ばれ、そこからメインの物語が始まる――という流れだったようです。

 冒頭部分さえ理解できれば、あとはもうわかりやすいです。
 といっても、それほど難解で濃密なストーリーがあるわけではなく、気楽な雰囲気で、瀟洒な館内に現れるさまざまな幽霊たちの奇抜な姿を楽しむのがメインの作品でした。
 鑑賞するときは、内容がどうこうと難しく考えず、映像の芸術点の高さを味わうのがおすすめです。屋敷内の細かなギミックや、幽霊たちの凝った造形に純粋に見入るのが良いと思います。

 幾何学的デザインでガラス張りの屋敷は、どこか『ヘルレイザー』に登場するパズルボックス「ルマルシャンの箱」に通じるものがあり、外観・内観ともに非常に美しく、視覚を強く魅了します。
 登場する幽霊たちも、ゴシックでグロテスクなデザインが印象的で、『ヘルレイザー』「魔道士(セノバイト)」『ベルセルク』「ゴッドハンド」と並べても、造形的にまったく違和感のない風貌が多く、登場シーンを何度もじっくり鑑賞してしまいました。


登場する13体の幽霊一覧(The Black Zodiac)

番号英名日本語名(意訳)生前の背景と特徴
1The First Born Son最初に生まれし息子西部開拓時代の少年。カウボーイごっこ中に本物の矢で射殺された。頭に矢が刺さった姿のまま現れる。
2The Torso胴体の男マフィアの賭博師ジミー・ギャンビーノ。負けが込んで胴体だけにされ、樽に詰められて海に捨てられた。透明なビニールに包まれた切断死体としてうごめく。
3The Bound Woman縛られた女高校の人気チアリーダー。恋人を弄んだ報いで、プロムの夜に殺され、縄で吊られた。首吊り姿のまま浮遊する。
4The Withered Lover枯れた恋人アーサーの妻・ジーン。火災で重度の火傷を負い死亡。唯一「善なる霊」で、家族を守る役割を果たす。
5The Torn Prince裂かれた王子野球の天才青年。傲慢な性格から事故死。今もバットを振り回し、身体は切断面だらけ。
6The Angry Princess怒れる姫美容整形中毒の女性。自己嫌悪の末に自傷自殺。全裸のまま血まみれで歩く印象的な霊。鏡とナイフが象徴。
7The Pilgrimess巡礼女魔女狩り時代の女性。無実の罪で閉じ込められ、餓死。鉄枷と木の檻に囚われた姿で現れる。
8The Great Child巨大な子ども知的障害をもつ巨漢の男。見世物小屋で母親(#9)と共に働いていた。
9The Dire Mother痛ましき母見世物小屋で虐げられた小人女性。息子と共に殺され、今も二人で行動する。息子は彼女を常に守ろうとする。
10The Hammer鍛冶屋黒人鍛冶職人。冤罪で家族を殺され、自らも村人に磔にされた。身体には釘と鎖が打ち込まれている。
11The Jackal山猫男女性を襲うサディスト。精神病院で拘束され、檻ごと焼き殺された。猛獣のように暴れる最凶霊。
12The Juggernaut殺人巨人巨体の連続殺人鬼。トラック運転手で、犠牲者を圧殺してきた。捕獲シーン(冒頭)で最も危険視されていた。
13The Broken Heart(または The Sacrifice)13番目の犠牲サイラスの儀式を完成させるために必要な「純粋な愛からの自己犠牲」の魂。劇中ではアーサーが該当。

※「Zodiac(黄道帯)」は、占星術などでは12星座しか用いられないが、実際には13星座が存在する。
 個人的な解釈ではあるが、「The Black Zodiac」には、13星座への照応として13体の邪悪な霊が配されているのではないかと考える。
 こうした象徴体系やオカルティズムに興味のある方は、アレイスター・クロウリー著『777の書』などを覗いてみると面白いかもしれない。


幽霊からは逃げるだけで戦わない

 個性豊かな幽霊たちが次々と登場しますが、登場人物たちに戦闘力はなく、エンカウントしても基本的に逃げるだけです。
 バトル系ホラーではないので、『死霊のはらわた』アッシュ・ウィリアムズのような戦闘シーンは望めませんが、それでも多少は“交戦の余地” があってもよかったのではと感じました。
 たとえば、「この幽霊にはこのアイテムが効く」「このタイプはこうすれば避けられる」といった設定が少しでもあれば、登場人物たちの見せ場も増えて、作品全体がもっと引き締まったように感じます。
 定番ではありますが、
 ──音に反応する幽霊なので近くでは静かにすればやり過ごせる
 ──息を止めれば察知されない
 といった設定も好きなので、今回は少しもったいなく感じました。

 アーサーデニスが、ラテン語の『アルカナ(Arcanum)』による封印文様が記されたガラス板を盾代わりにして幽霊から身を守りつつ進むシーンがあります。
 しかし、そのガラスがあまりにも大きく、持ち歩くのも一苦労。動きづらそうで、画的にもやや地味です。
 この場面でデニスがアーサーに「お先にどうぞ、キャプテン・アメリカ(原文:After you, Captain America.)」と声をかけるくだりはユーモラスですが、持っているのは盾というより“壁”のような代物で、当然ながら投擲攻撃に使える武器にはなりません。

 その後、幽霊に遭遇すると、突如として自己犠牲の覚悟を見せたデニスが、人ひとり分ほどの狭いスペースにアーサーを押し込み、前方をガラスで塞いで、自分は武器も防具も持たずに幽霊と対峙します。
 本来なら胸が熱くなる感動の場面ですが、それまでのデニスのキャラクター像を思うと「えっ、悪人ではないけれど、そこまで献身的なタイプだったっけ?」と、ここは少し違和感を覚えました。
 とはいえ、土壇場で「このまま二人ともやられるくらいなら」と死を覚悟し、せめてアーサーだけでも助けようとするデニスの行動は、彼なりに後悔を残さない人生の幕引きを選んだ結果と考えれば納得がいきます。

 結局デニスは幽霊に殺され、その隙にアーサーは逃げ延びます。この作品におけるアーサーは、最初から最後までとにかく“逃げに徹する”立ち位置です。
 とはいえ、彼はあくまで一般人。下手に幽霊へ向かっていかず、冷静に逃げの判断を貫く姿勢は、ある意味で最も現実的で賢明な行動ともいえるでしょう。


時間の流れが不明瞭

 冒頭のシーンで、サイラスは廃車の下敷きになり、胸元あたりから出血します。
 ところが、終盤に再登場したサイラスのシャツの胸元にも、まだ乾いていないような鮮血がべったりと付着していました。
 どうやら服を着替える暇もなかったようで、まるで廃車置き場からそのまま館に直行したかのように見えます。
 冒頭の「怒れる幽霊(ジャガーノート)」の捕獲シーンから、アーサーたちが館を訪れるまでには、少なくとも一日は経過していそうに思えますが……。
 時間経過の扱いが今ひとつ曖昧で、観る側として少し混乱しました。もっとも、細かいことは気にしてはいけない作品なのかもしれません。


大活躍、ハウスキーパーのマギー

 ムードメーカーであり、コメディリリーフ的な役割を担うハウスキーパーのマギーは、クリティコス一家とともに屋敷を訪れます。
 最初は子どもたちと屋敷の内部を探検して楽しんでいたマギーでしたが、成り行きで中盤以降はずっと屋敷のコントロール室で過ごしました。

 そしてクライマックス直前で、それが思わぬ形で物語を動かします。
 サイラスが再登場し、アーサーに「子どもたちを助けたければ13番目の幽霊になれ」と強要していたとき、マギーがコントロール室のスイッチやボリュームを手当たり次第にいじり始めました。
 その結果、装置の制御はめちゃくちゃに乱れ、幽霊たちを縛っていた魔術的な拘束が解かれます。
 サイラスに深い憎悪を抱いていた幽霊たちは一斉に彼へ襲いかかり、因果応報。サイラスは無残に引き裂かれ、ついに本当の死を迎えました。

 その後、アーサーは数多の回転刃に囲まれた装置の中心部に囚われていた子どもたちを救うため、死を恐れずに飛び込みます。
 運命が味方したのか、奇跡的に刃に切り刻まれることなくすり抜け、無事に中心部へ到達。同時に屋敷は崩壊し、アーサーは子どもたちに覆いかぶさって身を挺して守ります。
 こうしてクリティコス一家の面々は救われ、サイラスの野望も潰えましたが、その結末を導いた最大の功労者こそマギーだったと言えるでしょう。

 大団円を迎えたクリティコス一家。
 しかし、一家とは分断状態のマギーはただ一人、「こんなの仕事契約にないわ。もうハウスキーパーは辞める!」と愚痴をこぼし、物語はそこで幕を閉じます。
 軽妙なユーモアで締めるラストとして、とても後味の良い終わり方でした。


まとめ:「13ゴースト」はAmazonプライム・ビデオで鑑賞可能

 絶対に見逃せない“名作”とまでは言えませんが、ビジュアルの完成度は非常に高く、十分に鑑賞する価値のある作品です。
 幽霊屋敷×スチームパンク×ゴシックホラーが融合した独特の世界観は、一見の価値があります。

 「怖い映画ですか?」と訊かれたら、私はホラーに“恐怖”よりも映像的な魅力を求めるタイプなので、正直まったく怖くは感じませんでした。
 とはいえ、このあたりは個人差が大きいでしょう。
 作品全体の面白さを10点満点で評価するなら、6〜7点といったところ。
 緻密なストーリー性を期待するよりも、ホラー映画の美術演出・クリーチャーデザイン・造形美に興味がある人にこそ強くおすすめしたい一本です。

 この作品はAmazonプライム・ビデオで、レンタル440円で視聴可能でした。
 気長に待てば、月替わりの“100円レンタル”対象になることもあるかもしれません(時期は未定ですが)。
 また、Amazonでは中古DVDが400円前後で購入できるため、配信レンタルよりもDVDをコレクションとして持つ方が結果的にお得かもしれません。


作品の基本情報

タイトル13ゴースト/(原題)Thir13en Ghosts(13 Ghosts)
公開年/製作国2001年/アメリカ
監督・脚本監督:スティーヴ・ベック/脚本:ニール・マーシャル・スティーヴンス、リチャード・ドヴィディオ
キャストトニー・シャルーブ/エンベス・デイヴィッツ/マシュー・リラード/シャノン・エリザベス/F・マーリー・エイブラハム/ラー・ディガ/JR・ボーン ほか
上映時間99分
ジャンル幽霊屋敷系ホラー
視聴環境Amazonプライム・ビデオ(レンタル)

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